「……もしかして、緊張してる?」


 ヴァーリックが尋ねる。オティリエはドキッと身体を強張らせたあと、静かに首を横に振った。


「いえ、そんな……」

「そっか。……僕は緊張している。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ」


 ヴァーリックはそう言って、自身の胸に手を当てる。どこか不安げな表情。オティリエの胸がまたもやドキドキと騒ぎはじめた。


「あ、あの……今日はお天気に恵まれてよかったですね。雨天の場合のセッティングについても妃殿下と打ち合わせはしておりましたけど、せっかく綺麗な庭園ですし、見ていただけてよかったなぁって。たくさんのご令嬢に喜んでいただけましたし、それに……えっと…………」


 あまりにも居た堪れなくて、必死に話題をひねり出したオティリエだったが、まったく長続きする感じがしない。ウンウン頭を悩ませつつ、チラリとヴァーリックの顔を見る。彼は穏やかにほほえみながら、オティリエのことをじっと見つめていた。


「オティリエ」


 ヴァーリックがオティリエの名前を呼ぶ。オティリエが「はい」と返事をし、彼のことをチラリと見る。しばしの沈黙。ヴァーリックが大きく深呼吸をする。


「――あの日の話の続きをしてもいい?」