そうこうしているうちに、ひとり、またひとりと令嬢たちがお茶会会場を去っていく。


【殿下や妃殿下はわたくしを呼び止めてくださらないかしら? このままじゃわたくし、本当に帰ってしまいますわよ?】

【私はきっと妃候補に選ばれたわよね。次に城に呼ばれるとしたらいつになるかしら? ……ああ、殿下がこちらを見ているわ! とても楽しみ……】


 が、本心ではこの場に残りたくてたまらないようだ。令嬢たちはチラチラとヴァーリックや王妃を振り返りつつ、期待に満ちた眼差しを送る。ヴァーリックはニコニコとほほえみ、彼女たちの熱視線を受け流していた。


「オティリエ様、絶対にまたお話をしましょうね」

「今度屋敷にいらっしゃってね? お買い物も、是非ご一緒したいわ」

「ありがとうございます、是非」


 一方その頃、オティリエはお茶会で知り合った令嬢たちと挨拶を交わしながら、温かい気持ちに包まれていた。


【最後にヴァーリック様とお話ができてよかった】

【こんなところで友人ができるなんて思ってなかったわ。帰ったら早速手紙を書いてみよう。お返事が来るといいのだけど……】

(よかった)


 このお茶会を準備した文官の一人として、悲しい思いを抱えたまま帰宅する人はいてほしくない。

 令嬢たちの心の声を聞きながら、オティリエはホッと胸を撫でおろした。