ヴァーリックがオティリエたちのもとに来てからほどなくしてお茶会が終わった。


「もっと殿下とお話したかったです……!」

「わたくしも同じ気持ちですわ!」

「本当に! 殿下ったらわたくしたちから離れてあちらのテーブルに行ってしまわれるんですもの。とても寂しかったです」

「お茶会の時間を延ばせませんの? 殿下にもっと私のことを知っていただきたいわ!」


 お茶会の開始以降ヴァーリックを取り合っていた高位(かつ自分に自信満々な)令嬢たちがヴァーリックのもとへ再集結し、彼にまとわりついている。


「そうだね……悪いけど、これから大事な用事があるんだ」

「まぁ……そうですの」

「残念ですわ……」


 ヴァーリックは穏やかにほほえんでいるものの、内心ではうんざりしているようだ。無理もない、とオティリエは同情してしまった。


(だけど、大事な用事ってなにかしら?)


 このあと、ヴァーリックは予定を入れていない。疲れるだろうし、妃選びについてゆっくり検討する時間が必要だろうと、補佐官たちで彼の時間の調整をしたのだ。なにか予定を入れたなら、オティリエの耳に入ってしかるべきなのだが。