【来なきゃよかったかもしれないって思っていたけど】

【こんなふうに友達ができて嬉しい】

【王都に来る楽しみが増えたわ】


 彼女たちの会話と心の声を聞きながら、オティリエはホッと胸を撫で下ろす。


(よかった……)


 王妃と一緒に頑張って準備をしてきたお茶会だ。嫌な思いをしてほしくない。できれば喜んでほしいと思っていたため、こうして目的が達成できたことを嬉しく思う。


「……楽しそうだね」


 と、背後から声をかけられる。


(あ……)


 オティリエが振り返ると、嬉しそうな笑顔を浮かべたヴァーリックと視線が絡む。ドキッと心臓が高鳴ると同時に、同じテーブルの令嬢たちがざわりと色めき立った。


「殿下!」

「ヴァーリック殿下!」


 先ほどまでは近づくことすらできなかったヴァーリックの登場に、令嬢たちの頬が染まる。


「あまりにも楽しそうに話をしているから僕も混ぜてもらいたくなってしまった。ダメかな?」

「まさか……!」

「是非お話させてください!」


 弾ける笑顔。ヴァーリックに声をかけてもらえてみんなとても嬉しそうだ。


【ありがとう、オティリエ】


 ふと、ヴァーリックの心の声が聞こえてくる。オティリエがヴァーリックを見つめると、彼はとてもまぶしそうに目を細める。その表情があまりにも優しくて、温かくて、オティリエは思わず泣きそうになってしまうのだった。