【どうしてわたくしが後回しなのよ。明らかに順番が逆でしょう? しかもなに? どうしてわたくしが笑われなきゃいけないわけ?】


 戸惑いながらもオティリエが耳を澄ますと、周囲の声が聞こえてくる。


【殿下に対して無礼な】
【自業自得ね。殿下の会話に割って入るなんて】
【いくら挨拶をしたくても今じゃないだろう?】


 屋敷内でイアマのことを否定する人間は誰もいない。オティリエは生まれてはじめてイアマが誰かに非難されるのを耳にした。


「それで、オティリエ嬢は人の心が読めるんだってね」

「は……はい。おっしゃるとおりでございます。あの……なんだかすみません」


 オティリエとしては、こんなふうに自分の能力を晒されることになるとは思っていなかった。事情を知っている家族や使用人たちならまだしも、今夜偶然居合わせた人たちに対してひどく申し訳なく思う。周囲から貴族たちがほとんどいなくなったことからも、彼らが気味悪がっているのは明白だ。先ほどからヴァーリックの心の声は聞こえてこないが、彼も同じように考えているのではないだろうか?


「どうして謝るんだい? 僕はすごいと思うよ。君だけが持つとても素晴らしい能力だ」


 ヴァーリックが微笑む。オティリエは思わずドキッとした。