「ねえオティリエ、このまま私の補佐官として働かない? あなたがいてくれると仕事がはかどるし、なによりとても楽しいのだけど」


 と、王妃がオティリエにほほえみかける。オティリエは思わず目を丸くした。


(妃殿下にそんなふうに思っていただけるなんて……)


 素直に嬉しい。それでも、オティリエは小さく首を横に振った。


「ありがとうございます。けれど私はヴァーリック様の補佐官ですから」


 早くヴァーリックのもとに帰りたい。彼の役に立ちたいと思ってしまうのだ。
 王妃は穏やかにほほえむと「そうね」と優しく返事をする。


「なにかあったらいつでも私を頼ってね。私はあなたのことを実の娘のように大切に思っているのよ?」

「妃殿下……」


 慈しむような眼差しにオティリエの目頭が熱くなる。


「はい! そうさせていただきます」


 かたく握手をしてから、オティリエは王妃の執務室をあとにした。