(嘘です。本当は仕事なんて関係なくて。……私もヴァーリック様に会いたかったんです)


 ヴァーリックの手をギュッと握り、オティリエは心のなかで小さくそうつぶやいた。
 彼は目を丸くすると、泣きそうな表情でそっと笑う。


【オティリエ……嬉しいよ、すごく。本当に会いたかった】


 触れ合っているのは手のひらだけなのに……まるで全身を力強く抱きしめられているかのようなそんな感覚。
 嬉しいのに苦しい。胸が熱くて、クラクラとめまいがして、全身が麻痺してしまったかのよう。相反するなにかがオティリエのなかで激しく暴れまわっている。

 そもそも、しばらく顔を合わせていなかったのはヴァーリックだけではない。エアニーたち補佐官だって条件は同じだ。それなのに、オティリエが会いたいと思っていたのは……焦がれていたのはヴァーリックだけだ。


(どうして? どうして私はヴァーリック様に会いたくてたまらなかったんだろう? ……どうしてヴァーリック様は私に会いたいって思ってくれたんだろう?)


 心臓がドキドキと鳴り響く。オティリエはヴァーリックと見つめ合いながら自問自答を繰り返すのだった。