(やっぱり、人の心が読めるなんて……気味が悪いことなんだよね)


 これまで屋敷の人間の反応しか知らなかったから、こうして人々に拒絶をされたことで改めて自分の能力が稀有であることを思い知る。王妃がどんなふうに感じたのか確かめるのが怖くて、オティリエはうつむき唇を噛む。そうしていないと涙がこぼれおちそうだった。


【心の声が読めるのか……いいな。すごくいい。僕は素晴らしい能力だと思うけど】


 すると、また誰かの心の声が聞こえてきた。先ほどの男性と同じ声音――そろりと顔を上げると、件の男性がオティリエのすぐ目の前にいる。驚くオティリエに向かって、彼は穏やかに微笑みかけた。


「大丈夫だよ、オティリエ嬢。君に聞かれて困るようなことを僕たちは考えないから。ね、母上」

「「……え?」」


 オティリエとイアマの声が綺麗にハモる。


【母上? それじゃあこの方がヴァーリック様なの?】


 イアマの声音は興奮を隠せていない。オティリエも一緒になって王妃と男性とを交互に見る。
 男性はオティリエを見つめつつ、そっと瞳を細めた。