翌朝、オティリエは早速王妃の執務室へと向かった。


「いらっしゃい、オティリエ。久しぶりね」


 王妃はそう言ってニコリとほほえんでくれる。相変わらず若々しく光り輝かんばかりに美しい。思わず見惚れてしまいつつ、オティリエは丁寧に膝を折った。


「ご無沙汰しております、妃殿下。このたびはヴァーリック殿下の補佐官として、お茶会のお手伝いをさせていただきたく……」

「まあ! そんな堅苦しい挨拶はよしてちょうだい? ヴァーリックに接するときと同じようにしてくれて構わないのよ?」

「そんな……恐れ多いことでございます」


 緊張でオティリエの心臓がドキドキと鳴る。貴族の娘として――ヴァーリックの補佐官として、王妃に対して失礼があってはならない。かといって、かしこまり過ぎては不興を買う場合もある。大事なのは適当適度な距離感だ。心の声を聞くに、今のところ王妃は気分を害していないが、一瞬たりとも気を抜くわけにはいかない。オティリエは密かに冷や汗をかいた。