「終わったね」


 ヴァーリックがつぶやく。
 時刻は深夜。他の補佐官たちは仕事を終えて帰宅しており、ここにはオティリエとヴァーリックしかいない。


「……終わりましたね」


 オティリエは返事をしながら机につっぷしてしまう。今は指一本動かせそうにない。オティリエははぁと大きくため息をついた。


「この三カ月ぐらい明け方近くまで仕事をしていたから疲れただろう? お疲れ様、オティリエ」


 ヴァーリックは眠そうに目をこすりつつ、オティリエに向かってほほ笑みかける。

 ジェイミー・ブランドンとの接触以降、オティリエたちは彼やその関係者にバレないよう、必死に調査を進めてきた。いくら当たりをつけていたとはいえ、資産や証拠を本当に見つけることができるのか、いつまで続くかわからない仕事をするのは相当な心労を伴う。

 けれど、元凶が辺境伯だという真実に辿り着いたとき、オティリエは報われたような心地がした。これまでの苦労をすべて忘れられるほどの達成感。「繋がった!」と他の補佐官たちと手を取り喜びあった日の感動を忘れることはないだろう。