(謀反の件は補佐官やお兄様といった限られた人間にしか話していないから)


 一般の文官たちはなんのためにここまで大規模な調査を行っているか知らない。もちろん、不正があるのだから調査を行ってしかるべきなのだが、少なくとも規模を縮小してもいい頃合いだと考えているものは多いはずだ。


(けれど調査はしっかりと継続されたままだから)


 目の前の文官はオティリエたちが謀反の証拠を探している可能性を考え、探りを入れに来たのだろう。ここで頑なに調査の必要性を訴えれば、オティリエたちが謀反を疑っていることがバレるかもしれない。


「たしかに……言われてみればそうかもしれませんね」

「そうでしょう? まあ、余計なお節介かもしれませんけど、見たところかなりお疲れのようで気になったものですから」


 文官はそう言ってニコリとほほえむ。もしも心の声が聞こえていなかったら『親切な気遣い』だと感じただろう。


「ありがとうございます。私、ヴァーリック様に進言してみますね!」


 オティリエがそう言うと、彼は「是非そうしてください」と目を細めた。