「支所で働く神官たちの人数についても領主たちから報告が続々と上がってきています。小さな街については資料どおりの人数が雇用されています。……が、大きな街では少なくとも一人、最大で三人、神官の人数があいません」

「つまり、あわない人数の分だけ、帳簿に人件費を多く計上している、ということだね」


 人件費等の経費を多く計上することは見かけ上の所得……資産を少なく見せることにつながる。逆に言えば、その分だけ神殿が資産を隠しているということだ。


「来殿者数、寄付金等の額については鋭意調査中ですが、少なくとも一日の来殿者数は資料に記載の数字よりも多いものと思われます」

「だろうね」


 ヴァーリックはまたもやため息をつきつつ、そっと額を押さえた。


「ここまで証拠があがっているんだ。収入や経費を誤魔化したことについては簡単に罪に問えるだろう。だけど、今回は隠している資産を――謀反の準備をしていたという証拠を見つけなければ意味がない。首謀者の一人を捕らえたところで暴動が起こってしまったら意味がないからね」

「……こうなったら、神官長を直接問い詰めたほうが早いのでは? ぼくたちにはオティリエさんがいますし、ある程度資料がまとまった時点で投獄するのが一番かと」

「そうだね。通常なら少しの間泳がせて様子を見るけれど、今回はそれが必要ない。オティリエの前では嘘が通用しないからね。謀反のこと、資産を隠している場所について問い詰めれば、たとえ黙秘をされても、心の声から証拠にたどり着けるかもしれない」


 ヴァーリックの言葉に補佐官たちがうなずく。


「オティリエ、やってくれるかい?」

「もちろんです、ヴァーリック様」


 返事をしつつオティリエはグッと拳を握った。