オティリエが能力を込めた水晶は翌日には神殿――調査を担当している文官たちへと届けられた。入れ替わりに、昨日の調査結果がヴァーリックたちの元へと届くことになる。資料を読みながら、ヴァーリックは深いため息をついた。


「やはり神殿の修繕費については明らかにおかしいようだね。昨日、城内の設計担当者に実際の修繕箇所を確認してもらったうえで必要な費用を計算してもらったけど、契約書に書かれている設計額とまったくあわない。材料費、人件費、作業日数のどれも相場よりも数段高い金額が記載されているんだ」

「それは――表向きの契約額は高く設定し、実際にはそれより少ない金額を業者に支払っている、ということですか?」

「そういうこと。この契約だけで少なくとも数百万、神殿が得をしている計算だ」


 神殿の修繕は国からの補助金でまかなわれている。まずは神殿から国に対して見積書を提出し、内容に問題がなければ国は補助金を交付する。それから神殿と業者との間で直接契約を結んで工事を施工、契約額と補助金との差額が国に返還される、という流れだ。


「補助金の申請書を入手しました。こちらに記載されている修繕箇所と実際の修繕箇所は範囲がまったく異なります。これにより設計のおかしな部分を誤魔化したのでしょう」


 説明をしながらエアニーは眉間にシワを寄せる。補佐官たちの間にため息が漏れた。