「力を込めるのはこのぐらいで大丈夫だ。容量的におそらくこれ以上は入らないと思う」

「――これでどのぐらい能力が保つものなのでしょう?」

「水晶に込めた能力の効果には個人差がある。試してみないことにはなんとも言えないんだ。短時間に強い能力を発揮する場合もあれば、能力は弱くても長期間ゆっくりと持続する場合もある」

「そうなんですね」


 持続力は長いほうがいいものの、能力が弱すぎて心の声が聞こえないのでは意味がない。力を込めるときに意識をすれば多少は効果が違うだろうか? オティリエは別の水晶を手にとりグッと力を込めてみる。


(もう少し、もう少し……)

「オティリエ、あまり根を詰めるとバテてしまう。君が倒れたら大変だ。今日はそのぐらいにして……」

「続けさせてください。だって私、自分の能力を必要としていただけることが嬉しいんです。大嫌いだった私の能力が国を守る鍵になるかもしれないって思ったら、居ても立ってもいられなくて」

「オティリエ……」

「それに、体力ならまだまだ有り余っています! 簡単に倒れたりしませんよ。だって私、ヴァーリック様の補佐官ですもの」


 ヴァーリックの理想や願いに寄り添いながら、ときに背中を守り、腕として働く。ようやくオティリエも補佐官としての仕事ができるようになってきた。――彼に見合う能力を持つと胸を張って言えるようになってきたのだ。今頑張らなくては後悔する。


「うん……そうだね」


 【抱きしめたい】と――オティリエには聞こえぬようにつぶやきながら、ヴァーリックはそっと目を細めるのだった。