「あの……そもそも、神官たちが直接そういったものを準備できるものなのでしょうか? つてがなさそうですし、神殿がそんなものを用意しようとすれば、それだけで怪しまれてしまうような。誰か仲介者がいるなら話は別なのでしょうけど……」


 控室で声を潜めつつ、オティリエたちは状況を一つ一つ整理していく。


「そうだね、オティリエの言うとおりだ。僕はこの話の裏には絶対貴族が潜んでいると思う。大きな騎士団を持つ高位貴族なら武器や武具を大量に購入しても怪しまれづらいからね」

「そんな……」


 神殿の参拝者――信者たちは特別な訓練を受けていないから、仮に武器を手に取って襲いかかってきたとしても鎮圧するのは簡単だろう。けれど、相手が訓練を受けた騎士たちなら話は別だ。本気で国がひっくり返る可能性だってある。


「とにもかくにもまずは調査だ」


 ヴァーリックの言葉にオティリエはうなずく。

 とはいえ、ヴァーリックたちが神殿にとどまって調査を行うわけではない。彼には他にも公務があるし、この件について国王への報告も必要だ。この場は騎士や文官たちに任せて一旦城に帰ることになった。

 けれど、ヴァーリックとともに城に戻ったあともオティリエは神殿のことが気になってしまう。神官たちがなにを考えているのか、資産は見つかったのか……不安は尽きない。彼女には彼女のすべきことがあるとわかっていても、どうにも落ち着かないのだ。

 深夜になり自分に割り振られた仕事を終えたあとも、オティリエはデスクから動くことができずにいた。