ヴァーリックの要請により、視察当日のうちに、たくさんの騎士や文官たちが神殿へとやってきた。

 彼らに与えられた仕事は大きくわけて二つある。

 一つは帳簿や来殿者数といった数字に関する調査だ。
 これまでのやりとりから、神官長が寄付金といった収入や経費を誤魔化しているのは明らかである。しかし、その金額は未知数であり、精査が必要な状態だ。この調査により、隠された資産がどれぐらいあるのか確認することが急務となる。

 もう一つは、隠された資産の在り処を実際に探すことだ。
 『金』というわかりやすい形で神殿内にあるならば話しは簡単なのだが……。


「おそらくは違うだろうね」


 ヴァーリックはそう言ってため息をつく。


「謀反を起こすためには『人』、それから『馬や武器、武具』『兵糧』などが必要だ。だけど、資金があったとしても、これらすべてをいきなり揃えるのは難しい。生産が可能な数には限りがあるし、神殿がそんなものを大量発注したらとても目立つからね。長い年月をかけてどこかに蓄えていると考えたほうがしっくりくるんだ」