「これは……」

「うん。明らかに数が足りないね」

「え? そんな、まさか……そんなはずは!」


 ヴァーリックの言葉に神官長は焦ったように声を上げる。彼は資料と宝物とを何度も何度も見比べながら「ああ!」と大きな声をあげた。


「――本当だ。数が足りておりません。一体誰がこんなことを……大切な宝物を盗まれてしまうなんて」

【……私はあくまで今気づいた。今気づいたんだ】


 まるで自分に言い聞かせるような言葉。神官長は明らかに嘘をついている。ヴァーリックは険しい表情で神官長に詰め寄った。


「最後に宝物庫の中を確認したのは?」

「それは……いつだったでしょう? 覚えておりません」

【そんなこと、どうだっていいだろう? いつの間にかなくなったと言っているのに、どうしてこうもしつこく質問を重ねてくるんだ?】


 神官長は揉み手をしながら眉間に薄っすらとシワを寄せる。ヴァーリックは宝物庫の中をぐるりと歩きつつジロリと神官長を睨みつけた。