神官長が神官の名簿と契約書を手に戻ってきたあと、オティリエはヴァーリックとエアニーとともに神殿の宝物庫へと移動をした。

 宝物庫は神殿の奥にある古い小さな建物だ。通常の参拝客が入れないよう厳重な警備が敷かれており、歴史と貴重性を感じさせる。


【オティリエ、僕に君の能力を貸してほしい。神官長の心の声を聞かせてくれるかい?】

(もちろんです)


 雑音を減らすため、同行者の数はかなり絞った。このためオティリエはヴァーリックに自分の能力を分け与えると同時に、彼の目としても働かなければならない。


「こちらでございます」


 ガチャガチャと音を立て、神官長が宝物庫の鍵をあける。オティリエたちは神官長のあとに続き、建物のなかに入った。

 事前に配布された資料にはここで保管されている宝物の数や種類が記されている。異国から贈られた石像、神の声を実際に聞いたとされる聖人の記した経典に、国王から下賜されたという宝石。他にも陶器や十字架、絵画や鏡といった品が置かれている――はずだった。

 資料と照らし合わせながらオティリエたちが宝物の数を数えていく。