【神官の数? そんなこと、去年は尋ねなかったじゃないか。国にとって神官の人数なんてどうでもいいことだろうに。さて、なんとこたえるか……】


 ぶつぶつと文句をつぶやいたあと、神官長はフッと目を細めた。


「……さようでございます。来殿者たちのニーズが高まっておりまして、神官の数を増やさざるを得なかったのですよ」

「その割には来殿者数はほぼ横ばい……増えていないんだよね。ニーズの高まりというのが僕にはイマイチよくわからないな」

「それは……そんなはずは――――。いえ、後日資料をまとめて回答いたします」


 神官長が眉間にシワを寄せる。ヴァーリックは反対にふわりとほほえみを浮かべた。


【ヴァーリック殿下め、一体なんなんだ? 人の揚げ足をとりおってからに。……しかしどう資料をまとめたものか。実際の来殿者数は資料に記載している人数よりもずっと多いから……こちらの数字が間違っていましたと修正するのが一番だろうか? 寄付金の額は絶対にいじりたくないし】

(来殿者数を少なく申告している……?)


 神官長の心の声を聞きながら、オティリエはそれを必死にメモしていく。どういう意味か今はわからずとも、今後の調査の足がかりとなるはずだ。


「そうだ。あわせて神官の名簿を提出してもらえるかな? 支所の分まで含めてよろしくね」

「……承知しました」


 ドクンドクンと神官長の心臓が鳴る。彼の動揺が伝わってくる。