【どこのご令嬢だ? ……儚げで守ってあげたくなるタイプだ】
【小さくて愛らしいな】
【紫色の瞳が神秘的で吸い込まれそうだ】


 視線と同じ方角から心の声が聞こえてきて、オティリエはドキッとしてしまう。


「さすが、イアマはどこへ行っても人気者だな。早速男性陣の熱視線を感じるぞ」

「当然ですわ、お父様」

(……って! なにを勘違いしているの!? 私じゃなくてお姉様に決まっているじゃない!)


 現にイアマは男性たちに向かって笑顔を振りまき、小さく手を振っている。彼女は魅了の能力など使わずとも男性を虜にすることができる美しい女性だ。オティリエとは根本的に違う。


(バカね。私なんて眼中にないのに)


 密かに息をつきつつ、オティリエは父親たちの後ろを歩く。


【なんで手を振られているんだ? 俺が見ていたのはあの令嬢じゃないんだけどなぁ……】


 そんな心の声が複数あがる。けれどそれは他の参加者たちの声にかき消されて、オティリエに届くことはなかった。