「貴重な情報源……本当にそうですね。あのままイアマ嬢が諦めてくれれば、そんなものは不要だったのでしょうが」

「彼女はオティリエにかなり執心しているようだからね。簡単には引き下がらないと思っていたよ」


 ヴァーリックが使用人に持ちかけた取引の内容は二つある。

 一つはイアマの情報をヴァーリックに提供すること。もう一つはアインホルン家の使用人たちの魅了を解いていくことだ。

 ヴァーリックは自身の能力を込めた水晶を使用人に分け与え、他の使用人たちに渡すよう指示をした。雇用期間の短いものから少しずつ。段々と正気に戻るものが増えるように。報告書にはそちらのほうの経過も順調だと記されている。


「それにしてもオティリエの兄、か」

「お会いになられますか?」

「そうだね。彼には次の視察に同行してもらおうと思っていたし、ちょうどいい機会だ」


 ヴァーリックの返事を聞き、エアニーは承知しましたと頭を下げる。


(さてと)


 そろそろ次の仕事に移らなければならないだろう。ヴァーリックはぐっと気を引き締めた。