(一体どうなっているの?)


 イアマが悔しげに唇を噛む。
 妹のオティリエが屋敷を出てすでに三カ月。彼女は未だにヴァーリックの補佐官の地位におさまっているらしい。
 しかも、手柄をあげ、重宝されているという噂すら聞く。愚鈍で無能――使いものになるはずがないはずのあのオティリエが。憤るのも当然だ。


(あの子を迎えに行かせた使用人もノコノコと帰ってきてしまったし、本当に腹立たしいわ)


 三カ月前、イアマはオティリエを連れて帰るようにと厳命し使用人を城へと送り込んだ。けれどその男は『面会すら叶いませんでした』と笑顔で報告してくるではないか。

 そのときのイアマの怒りようは筆舌に尽くしがたいほどであった。


『この役立たず! なにが『面会すら叶いませんでした』よ! 会えるまで何度でも粘りなさい! 大体、正面突破が無理なら城に侵入すればいいだけでしょう?』

『そんなことをしては私の命がなくなってしまいます』

『なくなってしまえばいいのよ、そんなもの! わたくしの願いを叶えることのほうがよほど大事でしょう!』


 普段はイアマに心酔している使用人たちすら震え上がるほどの剣幕。当の使用人は困ったように笑い続けているのだから、余計イアマの気に障る。