オティリエはヴァーリックに連れられて男性の元へとやってきた。周囲にはフィリップの他にも事態を把握して駆けつけた騎士たちが大勢いる。当の男性はというと、ロープで手足を縛られ、がっくりとうなだれていた。


「ヴァーリック様」


 騎士たちが一斉に頭を下げる。ヴァーリックは彼らにそっとほほえみかけた。


「お疲れ様。よくやってくれたね。……実は、彼と話がしたいと思っているんだ。みんなは少し下がっていてくれる?」


 ヴァーリックが言うと、騎士たちは顔を見合わせながら困惑顔を浮かべる。


【ヴァーリック様の命令ならば従うべきとは思うが】

【大丈夫だろうか? こんな現場に殿下をお連れして、あとで問題になるのでは……】


 万が一ヴァーリックになにかあったら――従者としては当然の考え方だ。


(やっぱり諦めるべきなのかしら?)


 申し訳無さにオティリエがうつむいたときだった。