この広場のなかに誰かを殺そうとしている男性がいる。


(どうしよう? 私はどうしたらいいの?)


 キョロキョロと辺りを見回してみるが、様子のおかしい男性は見当たらない。見つけて止めなければと思うものの、方法がまったくわからないのだ。


「オティリエ? どうかしたの?」


 と、ヴァーリックが声をかけてくる。オティリエの様子がおかしいことに気づいてくれたのだ。


「ヴァーリック様、声が……」

「声?」

【許さない。絶対、絶対許さない】


 こうしている間にも、男性の心の声が聞こえてくる。どうしたら一番効率よくヴァーリックに状況を伝えられるだろう? 今は説明している時間が惜しい。


(そうだわ)


 オティリエはハッと思い立ち、ヴァーリックの手のひらを勢いよく握る。


「オティリエ!? 一体どうし……」

【殺してやる。全員、許してなるものか。大丈夫、今日のために準備を積み重ねてきたんだ。絶対に成功させてみせる】


 いきなり手を握られたために一瞬だけ頬を染めたものの、ヴァーリックはすぐに神妙な面持ちへと切り替わった。