「どれも可愛いね。オティリエによく似合いそうだ」


 髪飾りを手に取り、オティリエにあてがいながらヴァーリックが笑う。


「あっ……ありがとうございます。どれも素敵ですよね。惚れ惚れしてしまいます。だけど、私は自分で自分のものを選んだことがほとんどなくて。どれがいいか決めきれる気がしないんです。ドレスもカランに選んでもらいましたし」


 実家で使っていたものはすべてイアマの使い古しだった。なにかを選ぶ権利が自分にあるという状態にまだまだ慣れることができず、オティリエは及び腰になってしまう。


「大丈夫だよ。何時間でも付き合うから。オティリエが好きだと思えるものにとことん向き合ってよ」

「そ、そういうわけにはまいりません。ヴァーリック様の貴重な時間をそんなことのために費やすなんてダメです。あの、お買い物は私のレベルがもう少しあがってから……あまり時間をかけずに選べるようになってからということで」


 と、オティリエがそうこたえたそのときだった。


【殺す……ここにいるやつらみんな、俺が殺してやる】

(え?)


 頭のなかに知らない男性の心の声が流れ込んでくる。キョロキョロと辺りを見回してみたものの、どの人が、どこから発したものかがまったくわからない。


(どうしよう……)


 オティリエは途方に暮れながら、ゴクリとつばを飲んだ。