「それにしても、今夜の夜会は楽しみだわ。ヴァーリック様にお会いできるってこともあるけど、妃殿下にお会いするのだってわたくしははじめただもの。お二人ともあまり夜会にはお見えにならないから」

「そうだな。こんな機会は滅多にない。ほとんどの高位貴族が今夜という機会に賭けているといっても過言ではない。それに、上手くすればオティリエの厄介払いができるかもしれんぞ?」

「え……?」


 唐突に自分の名前を出されて、オティリエは思わず目を丸くする。


「厄介払いってどういうこと?」

「ほら。王宮にはいろんな仕事があるだろう?」

「もちろんそれは知っているわ。現にお兄様だって文官として働いていらっしゃるし、他にも騎士や侍女、下働きといった仕事があるのでしょう?」

「そのとおり。それだけ仕事が多岐にわたるのだから、もしかしたらオティリエ程度でもできることがあるんじゃないかと……紹介してもらえるかもしれないと思ってね。なにせ身分だけは高いのだから」


 二人の会話を聞きながら、オティリエは瞳を輝かせる。