「なんだか心が洗われますね」


 寺院の奥にある白磁の聖女像を見上げながら、オティリエはそっと手を合わせる。

 書物に書かれた内容や挿絵を見るより、自分の目で見て、感じたもののほうがずっとずっと自分事としてとらえられる。
 なにより、参拝者の表情や様子は挿絵からはうかがうことができない。


(みんな温かい表情をしている)


 建物の美しさや歴史的な背景も相まって、ここは国民たちの心の拠り所なのだろう。


「この辺には他にも歴史的な建造物がいくつもあるからまわってみる? もちろん、オティリエが別のことをしたいならそれでも……」

「いいえ! 私からもぜひお願いしたいと思っていました。あの……ヴァーリック様がよろしければ、宝物殿も拝見してみたいのですが」

「もちろん。時間が許す限り色々とまわってみようか」


 二人はそれから色んな場所を歩いて回った。歴史の舞台となった門や古い王族の墓、花や噴水の美しい自然公園――どれもオティリエが見てみたいと願っていた場所だ。