食事を終えるとオティリエとヴァーリックは街へと繰り出した。けれど、二人が向かうのは人混みの多い商店街ではない。郊外の方角だ。


「ヴァーリック様、こちらにはなにがあるんですか?」

「オティリエは熱心に歴史書を読んでくれていただろう? だから、王都にある歴史に関連深い名所を巡ってみようと思ったんだよね」


 ヴァーリックの言葉に、オティリエはぐるりと街並みを見回してみる。と、見覚えのある建物を発見して思わず瞳を輝かせた。


「もしかして、あちらはトゥワリエ寺院でしょうか?」

「そう。僕の曽祖父が作らせた寺院だ」

「たしか、天災や疫病が続いたあと、平穏な世を願って建てられたお寺なんですよね? 大きな聖女様の像が祀られているって読みました」


 寺院に近づくにつれ、たくさんの人々が参拝している様子が見えてきた。


「そうだよ。寺院に込められた願いのとおり父の御代は平穏だ。けれど、いつまた大変な事態が起こるとも限らない。だから、オティリエにも実際にここに来てみてみてもらいたかったんだ。とても綺麗な場所だろう?」

「ええ」


 城とはまた趣の異なった美しい建物。神聖な場所ならではの澄んだ空気を吸い込みながら、オティリエはほぅと息をついた。