王都の外れで二人は馬車を降りた。


「さてと、お腹が空いたね。まずは食事にしようか」


 ヴァーリックはそう言ってオティリエに優しく微笑みかける。と、オティリエはあることに気づいて足を止めた。


「ヴァーリック様……今日は瞳の色がいつもと違うんですね?」


 普段は紫と緑の神秘的なオッドアイなのに、今日は両目とも緑色だ。薄暗い馬車のなかではいまいちわからなかったが、太陽の下だと一目瞭然である。


「僕の瞳の色は目立つからね。街中に僕がどんな顔か知ってるものは少なくとも、オッドアイというだけで身分がバレてしまう可能性もある。だから、補佐官の一人に頼んで緑色に見えるように変えてもらったんだ。服装もいつもとはちょっとテイストが違うだろう? どう? 似合ってる?」

「はい、とっても素敵です」


 王宮にいるときよりも少しカジュアルな街歩きにピッタリのファッション。醸し出す高貴なオーラから平民には当然見えないが、爽やかで格好よく、いつまでも見つめていたくなる。


(でも……私はいつものヴァーリック様が好きだな)


 オティリエと同じ紫色の瞳――それが彼とオティリエを繋いでくれる絆のような気がしていた。だから、少しだけ寂しい……なんて、そんな本音はとても言えないけれど。