(ヴァーリック様、どんなふうに思っていらっしゃるんだろう?)


 印象が違うとは言われたが、それ以外の感想が聞こえてこない。変だとか、似合わないとか、そういうことを思われていたらどうしよう? ――後ろ向きなことばかりを考えて、次第に顔がうつむいてしまう。


「ねえオティリエ、顔を上げて」


 オティリエが密かに困惑していると、ヴァーリックからそう声をかけられる。おそるおそる顔を上げたオティリエに、ヴァーリックはふわりと微笑んだ。


「僕がどう思っているか、知りたい?」

「え? それは……はい。知りたいです」


 人の気持ちなんてわからなければいいのに――ずっとずっとそう思って生きてきた。わからなければ傷つかない。苦しまなくて済む。自分の能力を呪ったことだってあったのに、オティリエは今、誰かの気持ちを知りたいと心から思っている。


「……オティリエがそんなふうに思えるようになって本当によかった」


 ヴァーリックが微笑む。オティリエは「え?」と小さく首を傾げた。


「出会ったばかりのオティリエははとにかく『心の声が嫌でたまらない』って感じだったからね。僕はよく考え事をするし、仮定や推測をすることがとても多い。混乱させるかもしれないと思って、できる限りオティリエに心の声を聞かせないようにしていたんだ」

「そうだったんですか?」


 ヴァーリックの心の声が聞こえないのは、オティリエに聞かれたくないことがあるからだと思っていた。しかし、よくよく考えれば、ヴァーリックははじめ『聞かれて困ることはない』と話していたし、オティリエのために能力を使ったり使わなかったりしていたということなのだろう。