「ねえ、こういうとき、どんな格好をすればいいの? あと、化粧とか、髪型とか……」

「そうですねぇ……お相手の好みはご存知ですか?」

「好み……」

『ヴァーリック様はあなたのような愛らしい女性を好みますから、変に背伸びをした服装じゃなくてよかったです』


 と、エアニーから言われたことを思い出す。


「可愛い系が好き、なんですって」

「なるほど……。ちなみに、同じ部署の方ですか?」

「え?」


 同じ部署――というか上司なのだが、ヴァーリックと出かけるとは言わないほうがいいだろう。オティリエは「そう」とだけ返事をする。


「だったら、お仕事の日とは少し違った印象を目指してみましょうか」

「少し違った印象……?」


 とは、どういう感じなのだろう? 理解の追いついていないオティリエをそのままに、カランは頭のなかでイメージを膨らませていく。


【ギャップ萌って大事だと思うのよね。オティリエ様は清楚系のザ・優等生って感じが似合っているし、お仕事のときにはそこを全面的に押し出してるけど、せっかくお出かけするんだもの。小悪魔系というか……甘辛ミックスな感じにしたらどうかしら? 口紅とかシャドウとか、普段よりもちょっと濃いめのものを選んで、ドレスも――こういうときのために雰囲気がちょっと違う可愛いのを選んでおいたし。髪も巻いてみたいなぁって思っていたのよね】


 オティリエの脳裏にいつもとは違った雰囲気の自分が浮かび上がる。

 ドキドキしつつ、オティリエはカランに身を任せた。