「ああ、イアマ! さすがは私の娘だ! おまえなら魅了の能力などなくとも、ヴァーリック殿下を……いや、国中のどんな男の心をも射止められるだろう」


 そうこうしている間に二人の父親がやってきた。父親はイアマを褒めちぎったあと、満足気に笑う。


「当然ですわ! 必ずやお父様の期待にこたえてみせます。わたくしは他人の心が読めるだけで他に能のない妹とは違いますもの」

(他に能のない妹、か。私にはこんな能力必要なかったのに。せめて私に他の人の心を読む能力がなければ……)


 そうすればもう少し心穏やかに暮らせたのではないだろうか? イアマと自分を比べることもなく、誰かの感情に惑わされることもない。使用人たちの辛辣な本音を聞かずに済んだなら、どれだけマシだっただろう?
 しかし、ないものねだりをしたところで意味はない。


 オティリエは沈んだ気持ちのまま王宮に向かう馬車へと乗り込んだ。