明日は休日。勤務時間外だ。断ろうと思えば断れる。――けれど、あんなふうに言われて「嫌」だなんて言えるはずがない。


(そもそも、嫌なはずがないし)


 ただただおそれおおいというだけだ。


「休日に上司と会うのは負担? やっぱり嫌かな?」

「そんなことないです! 絶対、思うはずがありません」


 むしろ嬉しい――そんな本音は言えないけれど。


「それじゃあ昼頃、部屋に迎えを寄越すから」

「あ……はい。わかりました」


 結局、オティリエがヴァーリックに勝てるはずがないのだ。頬を染めてうつむくオティリエにヴァーリックが追い打ちをかける。


「せっかくのデートだから、おめかししてきてね。……楽しみにしてる」

「え?」


 ボン! と音が聞こえそうなほど真っ赤になったオティリエは、ヴァーリックの言葉を何度も思い返しながら、しばらくのあいだ呆然としてしまうのだった。