「気になるところから……最初は浅くで構わないから、いろんな知識を吸収してみて。好奇心がオティリエを成長させてくれるよ」

「はい。ありがとうございます」


 彼もきっとそうやって少しずつ成長をしていったのだろう。オティリエは幼いヴァーリックの文字を撫でつつ、なんだか嬉しい気持ちになる。


【まったく。ヴァーリック様はオティリエさんにものすごく甘い】


 と、エアニーの心の声が聞こえてくる。


【本当はオティリエさんには新品の歴史書をお渡しするはずだったんですよ。けれど、ヴァーリック様がこちらを渡すようにと聞かなくて】


 オティリエが目を丸くする。エアニーはふっと口元を緩めた。


【歴史書だけでなく、他の書籍もヴァーリック様がつい昨日まで愛用していたものです。大事に使ってください】

(ヴァーリック様が愛用していた……?)


 目の前に山積みにされた書籍や資料。それらがヴァーリックの愛用していたものだというのなら――これからオティリエの進む道は、ヴァーリックに繋がっているのだと感じられる。彼がオティリエを本気で育てようとしてくれているのだとそう思えた。


「ヴァーリック様、私、頑張ります」

「うん。……期待してる」


 微笑むオティリエを見つめつつ、ヴァーリックはまぶし気に目を細めた。