「昨日も言ったけど、最初からあまり無理をしてはいけないよ? キツイと思ったら休んでいい。体力的なことも心配だけど、オティリエは心の声まで聞こえてしまうから、他の人より疲れやすいと思うんだ」

「ヴァーリック様……」


 こんなふうにいたわりの言葉をかけてもらえて嬉しくないはずがない。オティリエは泣きそうになるのをこらえつつ「ありがとうございます」と返事をした。


「だけど私、大丈夫です。たしかに疲れはしましたけど、これまでずっと一人きりで部屋にこもっていたでしょう? いろんなことが新鮮で……時間が過ぎるのがあっという間で。楽しかったし、嬉しかったんです」


 誰も訪れない部屋のなか、娯楽と呼べるようなものはなにもなく、死んだように生きてきた日々。屋敷の人間に会ったとしても、かえってくるのは冷たい視線と心の声ばかり。なにもしていないはずなのに疲れている。心理的な疲労――生きることへの恐怖がすさまじかった。
 それに比べれば、昨日の疲れなどどうってことはない。ヴァーリックと会話をして、オティリエは改めてそう思った。