昨日は昼食を済ませたあと、エアニーと一緒に城内をひたすら歩き回った。総務、経済、文化、外交、福祉に建築土木など、各分野の責任者にオティリエを紹介するためだ。責任者たちはみな、オティリエの二回りは年上の男性ばかり。失礼がないようオティリエはまったく気が抜けなかった。

 とはいえ、若い娘だからと高圧的な態度をとるものも少なくない。しかし、彼らはオティリエがアインホルン家の末娘だと知るとくるりと手のひらを返し、ヘコヘコと低姿勢になる。オティリエの父親はやはり相当恐れられているらしい。心の声が聞こえるオティリエは、なんともいえない複雑な気持ちになってしまった。

 肉体的な疲労に精神的な疲労。完全に解消されたといえば嘘になる。


【オティリエ様、やっぱりまだ疲れているみたい。当然よね。働きはじめたばかりだもの。今日は少し頬紅を濃くしてみようかな? 血色がよく見えると、疲れが目立たないかも。色は……色白だからオレンジよりピンクのほうが似合うわね。あと、髪型は今日のドレスに合わせて……】


 カランはオティリエの様子を観察しつつ、いろんなことを考えてくれている。それだけで気持ち疲れが癒えていく心地がした。