柔らかな朝日がまぶたをくすぐる。温かくふかふかの布団にくるまれながら、オティリエはそのあまりの気持ちよさに微笑んだ。


「おはようございます、オティリエ様」


 優しい声音。ゆっくり目を開けると、侍女のカランの笑顔が飛び込んできた。


(夢かしら……?)


 目覚めたことを嬉しく思う日が来るなんて。

 朝が来るたびに『また目が覚めてしまった』と何度も何度も思ってきた。日の殆ど当たらない薄暗い部屋で、空腹に喘ぎながら涙を流した日々が嘘のようだ。


「さあ、朝の準備をしましょう。今日も忙しいのでしょう?」

「……ええ。お願いできる?」


 泣きそうになるのをグッとこらえて、オティリエはゆっくりと身を起こす。それからカランと微笑みあった。


「疲れはきちんととれましたか?」


 洗顔を済ませ、髪を整えながらカランが尋ねてくる。


「そうねぇ……ベッドの寝心地が最高だったし、仕事がとても楽しかったもの。あまり疲れてないと思うわ」


 ……そう返事をしたものの、鏡に映った自分の顔を見て、オティリエは思わず苦笑を浮かべてしまう。