「まあ、妃選びを実質的にすすめるのは母上なんだけどね。それでも、僕の希望は最大限に尊重してもらえる。だから僕は、この一年の間にどんな女性がいいかをきちんと考えなきゃいけないんだ」

「そうですね。ヴァーリック様は夜会にもほとんど出席なさいませんから。……意向に沿った結婚相手を選定するために、なにか方法を考えなければいけません」


 なるほど、そういったことも補佐官の仕事の一つなのだろう。オティリエは「わかりました」と返事をする。


「まあ、もうそんな必要ないかもしれないけどね」


 ヴァーリックが目を細める。と同時に、他の補佐官たちがそっと顔を見合わせた。


「え? どうしてですか?」


 尋ねても、ヴァーリックは微笑むばかりで返事はかえってこない。彼の心の声も聞こえないままだ。


(知りたいような、知りたくないような)


 はじめて覚える胸のざわめきに戸惑いつつ、オティリエはギュッと目をつぶるのだった。