シングルマザーでしたが、オフィスビルで俺様社長と一緒に子供を育てています。

 本当に頭が上がらない。
 しかし、無事に解決しても自分のやった事に対して責任は無しには出来ない。咲希は田中さんに辞表を出した。
 色々やってもらっておきながら辞めるのは自分勝手だろう。
 だが、自分の気持ちを隠しながら過ごすのは辛すぎる。今回の件で良く分かった。
 自分の気持ちがとっくに八神社長に流れていることに。捕まったと連絡が来た時や罪が認められたと連絡が来た時も気持ちは動かなかった。
 むしろどこか、スカッとしている自分が居た。既に翔也から心が離れてしまったのだろう。もう何も感じない。
 だけど、だからと言って八神社長と、どうにかなろうとは思ってもいない。
 八神社長は今でも、雲の上の人なのだから。

「そうですか。辞めてしまうのですか?」

「……はい。色々とご親切にしてもらいながら、勝手な都合で申し訳ありませんでした」

 咲希は深々と頭を下げる。本当はたくさん相談をしたいし、謝罪をしたい。でも、それをしたらご迷惑をかけてしまう。田中さんは八神社長の祖父なのに。

「本当にお世話になりました。このご恩は一生忘れません」

 もう一度、頭を下げる。これでいい……。

「……分かりました。とりあえず預かっておきます」

「よろしくお願いします。では、仕事に戻ります」

 咲希は仕事に戻る事にした。すぐには辞められないので、とりあえずは勤務を続けるが、その間に次の仕事を見つけないと。
 奏太をおんぶして、会社の部品を配達に来た業者との最終チェックとサインをする。  
 それを並べて置いておくと部署の係員が取りに来る事になっている。サインが終わり、業者を外まで見送っていると八神社長が血相を変えてこちらに来た。