シングルマザーでしたが、オフィスビルで俺様社長と一緒に子供を育てています。

 そう言いかけた時、八神社長は私に手を握ってくる。えっ?

「そんな事で辞めたいとか言うな。責任ならアイツに取らせればいいだろう」

「そ、そういう訳には」

 すると、八神社長は強引にその手を引っ張ると、そのまま咲希を抱き締めてきた。ガバッと彼の胸元に抱きついた状態になってしまい、咲希は硬直してしまう。頬は赤く染まり、どういう状況なのか分からずじまい。

「あ、あの……八神社長」

「……いいから黙っていろ」

 それ以上何も話そうとしない。心臓がドキドキと高鳴って困ってしまう。
 彼は、どうしたのだろうか?
 言葉に詰まっていると、八神社長は突然に咲希を解放する。そのまま立ち上がり、リビングから出て行ってしまった。咲希は啞然とする。しかし、彼が耳まで真っ赤になっていたのは確かにこの目で見ていた。
 どうして、その行動に出たのか分からないが咲希の心は確かに揺れていた。
 静まり返ったリビングに、ただ恥ずかしそうに立ち尽くしていた。

 その後は普通に過ごしてくれたのだが、何故だか目を合わせてくれない。
 少しでも目が合ったとしても、すぐに逸らされてしまうので胸がギュッと締め付けられそうになる。その理由も何となく分かるが言えずじまい。
 もどかしく、悲しい時間を過ごした。

 だが、思わぬ転機が。しばらくして翔也が捕まったと連絡が届いた。
 権力の強い八神社長が警察に頼んでくれたので動いてくれて、友人の家などを転々としていたところを逮捕して連行。
 八神社長が頼んでくれた敏腕弁護士のお陰で暴行未遂や営業妨害など色々な理由で訴える事が出来るそうだ。と言っても全部八神社長がやってくれたのだが。