シングルマザーでしたが、オフィスビルで俺様社長と一緒に子供を育てています。

 そんな咲希を見ながら田中さんはクスッと笑った。

「言いそびれた事なんですが。悠斗はね。恋愛に不器用なんですよ」

 えっ……?
 田中さんを見るとニコッと微笑まれる。

「祖父の私が言うのも変ですが、悠斗はモテまして。ですが、近付いてくる女性は顔や学歴、財産目当ての方が多くて。よくウンザリした顔をしていました。それに、あの通り……生真面目な性格で、女性には奥手なところがありまして。なかなか自分からアプローチが出来ないみたいなんです。私は、息子に早くいい人を見つけて幸せになってほしいと願っているんですが……なかなか難しくて。だから悠斗のことをあたたかく見守ってあげて下さいね」

 田中さんは優しい口調でそう話してきた。孫の八神社長を大切に想ってるのが伝わってくる。

(あたたかく見守るか。私は……どうしたいのだろう?)

 今の生活を大切にしたいのに、何処か新しい気持ちが芽生えようとしていた。
 いや……すでに芽生えているのだろう。八神社長に対する想いが。ただ壊れるのが怖いだけ。恋愛に臆病になっているだけ。

 それからも八神家に出向き家事などを手伝った。お詫びのために始めた事なのに、
いつの間にか、それが当たり前のようになっていた。
 一緒に食事をするのが楽しい。八神社長も田中さんも率先して奏太の面倒を見てくれている。奏太もニコニコしながら楽しそうにしていた。
 だからバチが当たったのだろうか。あの人の存在を……すっかり忘れていた。
 あの日までは……。