シングルマザーでしたが、オフィスビルで俺様社長と一緒に子供を育てています。

「ふええ~ん」

 イヤイヤとしがみついて離れようとしない。

(あぁ、そんなにしがみついたらよだれと涙で高そうなスーツがベタベタになっちゃうじゃない)

 奏太は人懐っこいけど、ここまでベッタリなのは初めてだ。

「奏太~そろそろ帰るから。こっちにいらっしゃい。メッ」

 さすがに八神社長に迷惑が、かかるため強めの口調で叱った。

「びええ~ん」

 だが余計に泣き出してしまい離れようとしない。うぅっ……困った。
 困り果てていたら八神社長が奏太の背中をポンポンと叩きあやしながら

「今なら時間が空いているから管理室まで送っていく」

 と言ってくれた。えぇっ!? 八神社長が送ってくれるだなんて。

「えっ……ですが」

 さっき忙しいと言っていませんでしたか?

「何だ? 俺が送って行くのはダメなのか?」

 八神社長にギロッと睨まれてしまった。

「いえ……そんな。ご、ご一緒させて下さい」

「うむ、なら行くとしよう」

 八神社長は、そう言うと奏太を抱っこしたまま部屋から出て行ってしまう。

「あっ……待って下さい」

 咲希は慌ててカバンを持つと、その後ろを追いかけた。本当にいいのだろうか?
 しかし八神社長は気にする事なく奏太をあやしながらエレベーターに乗り込んだ。
 そして1階に着くと、その足で管理室に向かおうとする。

「あ。待って下さい。この先は私が抱いて行きます」

 流石にこの状況は。八神社長が自分の子供を抱っこして歩いているなんて社内中の噂になってしまうだろう。それはマズい。