○ファミレス・入口(夜)
ドアが開くと音が鳴り店員が来る。

店員「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

日高「2人です」

店員「ご案内します」


○同・テーブル席(夜)
日高、オーダー用のタブレットを取って鈴香に渡す。
鈴香、メニューを見ながら、

鈴香「こんな時間に食べるのってやばいですよね?」

日高「(真剣に)うん、やばいな」

鈴香、タブレットから顔を上げて日高を見つめる。
日高、白い歯を見せてニヤッと笑う。

日高「誘ったのそっちじゃんって顔してるな」

鈴香「もういいんです! 今日は自分を甘やかします! ガッツリいきますからね!」

鈴香、ヤケクソで注文ボタンを押す。

日高「おー食っちゃえ食っちゃえ!」

×  ×  ×

鈴香のハンバーグステーキプレートとパン、日高のコーヒーが運ばれてくる。日高、クスクス笑い出す。

鈴香「なんで笑うんですか⁉」

日高「いや。体弱かったって言ってたし、てっきり小食なのかと思ってたけど。ホントにがっつり系だったから」

鈴香「(恥ずかしそうに)あぁ……」

日高「いーじゃん。たくさん食べれるのは健康な証拠だよ」

鈴香、ハンバーグを切り分けてプレートを日高の方にスライドさせる。

鈴香「……少し食べませんか?」

日高「じゃあもらう」

日高、カトラリーケースからフォークを取り、肉の塊に突き刺して口に運ぶ。

日高「んーうまい!」

鈴香、黙々と食べ進める。

日高「学生だよな。大学楽し?」

鈴香「ん~……楽し……くはないですね。みんな就職の話ばっかりで。私は夢とかないですし」

鈴香、元気がなくなる。

日高「夢をなんか大きくて立派なものだと思いすぎじゃねーの? 何になりたいとか、この仕事がしたいイコール夢っていう方程式はさ、つまんねーよ。いいじゃん、明日誰に会いたいとか、ファミレスでこうやって21時過ぎでも気にせずハンバーグ食いたいとか。そういうのも、夢の1つだと思うけどな。なんかねーの?」

鈴香、うーんと考える。

鈴香「……日高さんは?」

日高「俺はとりあえず、ビタレで東京ドーム埋めたいかな。あと世界の音楽チャートで1位獲るとか」

鈴香「日高さんの夢おっきいのばっかり! 全然ハンバーグレベルじゃないじゃないですか!」

日高「だーかーら! 夢に大きいも小さいもねーって」

鈴香、不満そうなな顔をする。

日高「とにかく。構えず、楽に考えればいいんだよ。これ、俺からの宿題な」

鈴香、切り分けたハンバーグを見つめる。


○駅・改札前(夜)
日高「じゃあ気をつけて」

鈴香「はい! ごちそうさまでした」

日高、鈴香が見えなくなるまで見届ける。
鈴香、改札横の柵まで戻ってくる。

鈴香「日高さん!」

日高「?」

鈴香「(緊張気味に)またライブ、行ってもいいですか?」

日高「(ニカッと笑う)おう! 待ってる」

鈴香、にっこり笑い返す。