○空
青空に真っ白な入道雲。
蝉の鳴き声が響く。


○ラーメン屋・店内
小林、カウンターを布巾で拭いている。
扉がガラガラと開く。

小林「すいません、まだ開店前なんです……あれ~もしかして、ビタレの飯田さんですかぁ?」
   
小林、大げさに反応する。
飯田、店内に入ってくる。

飯田「お前、イジってんだろ。せっかくお前の席取っといたのに、いらなそうだな」

小林「え⁉ 席って、もしかして武道館ライブのですか⁉」

飯田「ちゃーんと関係者席確保させていただきましたよ……だからさ、鈴香ちゃんにも声かけてもらえるか?」

小林「それは、はい……もちろんです」
   
小林と飯田、気まずそうに顔を見合わせる。


○鈴香のアパート・部屋の前(夕方)
小林、マスクを着けてお見舞いに来る。

小林「具合どう?」

鈴香「特に変わりなしだよ」

小林「そっか……そういえば、ビタレのこと知ってる?」

鈴香「(頷く)もうすぐだよね武道館公演」

小林「達也さんが席用意してくれてるって。体調良かったら鈴も行こうよ。まだ少し時間あるし」

鈴香「え~私その時まで生きてるかなぁ?」

鈴香、ヘラヘラしながら言う。

小林「(顔を歪めて)鈴……!」

鈴香「やだなぁ冗談だって。そんな顔しないでよ」
   
×  ×  ×
   
鈴香、ドアを閉めてしゃがみ込み、そのまま膝に顔を埋める。