○日高のマンション・部屋の前
鈴香、日高の部屋のチャイムを鳴らす。
日高がドアを開ける。

日高「いらっしゃい」

鈴香「これデザートです」
と、小さな白い箱を渡す。

日高「サンキュー」


○同・リビング
日高、マスクを着けて鈴香に近づき抱きしめる。

日高「年末年始バタつきそうだから、今のうちしかないと思って我儘言ったわ。体調は? 大丈夫か?」

鈴香、日高の腕の中で頷きながら、

鈴香「はい! 私も大和さん不足でしたもん」

日高「よし! とりあえず飯にしよう!」


○同・キッチン
鈴香と大和、一緒に料理をする。


○同・リビング(夕方)
鈴香と日高、ソファで一緒に横になりながらまどろむ。

日高「あ、そうだ。渡したいもんあったんだ。ちょっと動くぞ」
   
鈴香、日高と一緒に体を起こす。
日高が立ち上がると、鈴香が服の裾を掴んで引き止める。

日高「どうした?」

鈴香、俯いたまま。
日高、しゃがんで鈴香と目線を合わせる。

鈴香「・・・たいです」

日高「ん? ごめん、聞こえなかった」

鈴香「……もう、別れたいです」
   
日高、大きく目を見開く。

日高「(笑いながら)エイプリルフール先取り? クリスマスもまだだぞ」
   
鈴香、真剣な眼差しで日高を見る。
日高、深呼吸する。

日高「……なんでそんな結論に辿り着いたのか、一応聞いとこうか?」

鈴香「……どんどん夢を叶えていく大和さんを見てると、虚しくなるんです。私とは違うんだなって……だからもう、限界です」
   
日高、言葉に詰まる。

鈴香「……お邪魔しました」
   
鈴香、立ち上がり頭を下げて日高の横を通り過ぎる。

日高「鈴香、待てって!」
   
玄関からドアの閉まった音が聞こえる。


○同・作業部屋(夕方)
日高、重い足取りで部屋に入る。
デスクの上にはリボンが結ばれた小さな箱。
椅子に座り窓の外を見ると雪が降り出している。
日高、玄関へ走る。