12.運命の修学旅行

紘くんからメールだ。
「今日から修学旅行って言ってたよね?楽しんでね!何かあったら連絡してね!いってらっしゃい」

紘くんはまめだなー。こんなことまで覚えててくれるなんて。


自由行動の時間。私たちの班は一緒に食べ歩きをしたり色々な体験をして、あっという間に時間が過ぎて夜ご飯の時間になった。
夜ご飯はみんなでバーベキューすることになっている。



「あ!美琴ごめん!!私さっき宿舎の体育館にスマホ忘れて来ちゃったみたい!ちょっと探してくる!」
スマホどこやっちゃったんだろう。

体育館まで走って中に入ろうとした時、

「探してたのってこれのこと?」
中にはなぜか私のスマホを持った陽真里ちゃんがいた。
「あーそれそれ!ごめんねっありがと!」
そう言って受け取ろうとしたら
陽真里ちゃんはさっとスマホを持つ手を引いた。

「谷口さんさ、紘くんのことが好きなんでしょ?」
「え?」
「それなのになんでりのにまで手出すの?」

「はいこれ。」
そこには私のスマホから紘くん宛に電話をかけている画面を見せられた。

「陽真里ちゃん、ちょっと!」
「谷口さんは紘くんとお似合いだよ?」


「もしもし?優愛?」
陽真里ちゃんは嘘の笑顔を浮かべながら私にスマホを渡した。

「あ、ごめん紘くん。間違えて、、」
そう言おうとした瞬間、体育館の電気が消えた。
「きゃっ」
辺りが真っ暗で何も見えない。出口がどこかもわからなくなってしまった。そして恐怖に支配された。

「優愛??なんかあったの?大丈夫!?」
「紘くん、、。優愛、、間違えてかけちゃっただけだから気にしないでっ!」
私は電話を切ろうとした。
「優愛、嘘つかないで。」
「え!?」
「優愛が嘘ついてることくらいお見通しだよ?何があったの?」

なんでわかったんだろう。声震えちゃってたかな、、。
「、、。体育館ににいるんだけど友達が間違えて電気消しちゃって今真っ暗で何も見えないの、、。
ここからどうやって出ればいいのかな、、。」
流石に意地悪で消されたなんて言って迷惑かけられない。
「そっか、、。優愛落ち着いて。スマホのライトつけてみて!」

「つけたよ。」
ライトをつけると少しだけ近くが見えるようになった。

ちょっとずつ歩いてみると出口が見えた。

しかしドアに手をかけても鍵がかけられていて開かない。
「どーしよう。鍵がかかっちゃってる、、、」
「優愛、、。そのお友達ってまさかわざとやったんじゃないよね?」

「、、、どうだろう。」

「この前ライブに一緒に来てくれた子?」

どうして紘くんには全部わかってしまうんだろう。


13.私もみてよ

体育館の鍵を閉めた後、私は走ってみんながバーベキューしてるところまで戻った。

「あ、陽真里ちゃん!優愛みなかった?」
「えっ?」
「お前、今体育館の方から来たよな?」
みんなして私を責めるように聞いてくる。

「優愛ちゃんならさっき部屋の方に行くところみたよ。」
「部屋?なんで優愛部屋の方まで行ってるんだろ。見つからなかったのかな、、。」
美琴ちゃんが不思議そうにそう言った。

「てかお前なんで体育館の方にいたんだ?」

りのが顔をしかめて聞いてきた。

「たまたま、、。」

「お前、谷口になんかしたのか?」

どうして、、。どうしてみんなして谷口さんのことそんな気にかけているの?

りのにとって私は特別な存在じゃなくなったのかな、、、

「俺ちょっと谷口のこと探してくる。」

「りのっ!!」
私はりのの手首を掴んで呼び止めた。

「りの、行っても意味ないよ。だって今頃谷口さん、宇塚紘と仲良く電話でもしてるよ?」

「あぁ?」

「りの知らないでしょ?谷口さんと宇塚紘、キスしてたよ。谷口さんはりののことなんかなんとも思ってないよ。
だからりのが谷口さんのこと気にかける必要ない!」

最低だ。りのの気持ちも考えずに、、。
谷口さんのこともりののことも傷つけて。

「くだらなっ!」
美琴ちゃんが動かずにいる私たちを横目に、体育館の方へと歩いていった。



14.体育館

「優愛!??」

がちゃっと鍵が開く音が真っ暗な体育館に響いた。

「美琴!?」

「良かったー。大丈夫だった?」
体育館に微かに外の光が入り込み、美琴に抱きつかれた。
「ありがとー!助けに来てくれて。」


はっと我にかえり、繋がったままの電話に気づいた。

「紘くん、、ごめん!友達が開けてくれた!」

「そっか、、、。よかったー、、」
紘くんの声は本当に安心しきっていて、心配させてしまったことを痛感した。