時は、夜10時頃だった。

ところ変わって、私がいる部屋にて…

背中をまるめて泣いている私の前に、菅のかさと同行二人と書かれている白装束と一本の杖と納径帳が入っているポーチと黒数珠が並んでいた。

私は、四国へんろの旅に出ることを決めた。

次の朝だった。

おへんろさんの姿私は、玄関に立っていた。

私は、弟夫婦に言うた。

「兄さんは…ひとりで遠いところへ行く…」
「そんな…」
「義兄《おにい》さま。」
「もういいのだよ…兄さんは今までガマンしたけど…もう限界が来た…だから…遠いところへ行く…さよなら…」

そして私は、四国へんろの旅に出発した。

同時に私は、家と家族をすてた。

時は流れて…

旅立ってから4ヶ月目のきょう、私は高野山《ほんざん》にたどり着いた。

私は、静かに手を合わせて参拝をした。

納径帳《おしゅいんちょう》の最後の一ページに、金剛峰寺《ほんざん》の朱印《おしゅいん》をつけた。

これで、四国へんろの旅がすべて終わった。

【弥太郎(やたろう)・終わり〜これにより結願】