(ここより弥太郎さんの物語になります。)

私は、JRと南海電車の橋本駅まで歩いて行った。

橋本駅から南海電車高野線の電車に乗って極楽橋へ行った。

極楽橋からケーブルカーに乗って高野山の山頂に行った。

山頂の駅にケーブルカーが到着した。

高野山《ほんざん》に着いた…

けれど、ここで終わりではない…

金剛峰寺の奥の院は、まだずっと先にある。

あと少しだ…

けれど、少し休んでいこう…

山頂の展望台にいる私は、遠くをながめた。

遠くに見える四国や淡路島を見つめながら、私はつぶやいた。

しげみちさんは…

出発したかな…

すごくしんどそうにしていたけど…

大丈夫かな…

そんなことを思っている私は、今まで生きた人生をふりかえった。

私が四国へんろの旅に出たきっかけは二つあった。

ひとつは、コンカツがうまく行かなかった…

もうひとつは、会社を早期退職した…

コンカツを始めたのは、10年前だった。

弟が専門学校時代に知り合ったカノジョにプロポーズしたあと入籍した…

この時、私は30代の半ばだった。

30代のうちに恋人を作って結婚がしたい…

しかし、私には深刻な問題がたくさんあった。

弟はカノジョにプロポーズした後に、すぐに入籍した。

住まいは、家電つき家具つきのマンスリーアパートだった…

私はその頃、両親と実家で暮らしていた。

弟は、全日制高校から専門学校に行った…

私は高校に行かなかった…

私が中学の3年生の時に、父が預り金400万円を無断で使用した事件が発生した。

父は、会社に『落としました。』と報告した。

しかし、後になって父の親友の娘を助けるために使ったことが分かった。

親友に同情した父は、親友に400万円を差し出した。

父は困っている人を思うと同情するタイプだったので、母から『お人好し!!』と怒鳴られた。

父のせいで、家の貯金が著しく減った…

だから私は、中学卒業後に働きに出た。

私は、父が大キライだ!!

お人好しな上に、酒をのめば底なしになる…

職場の勤務態度がものすごく悪い…

そして、職を転々とした…

そんな状態が8年も続いた。

だから父なんか大キライだ!!

私は、死ぬまで父をうらみ通すしかないのか…