場面は戻って、足摺岬にて…

ぼくは、正晴さんと一緒に海をながめながら身の上話をした。

「そんなことがあったのですね。」

正晴さんは、ぼくにこう言うた。

「あんたもつらかったね…でも、あんたは報道の現場を通じて学んだ…よい経験ができたからそれでいいじゃないか…あの大震災のあと、あんたはどうしたのだね?」
「あの年の4月に…体調を崩して…ケーブルテレビ局をやめました…」
「そうか…お兄さんや、歩きへんろの旅は先が長いから…のんびりと歩いて行くのだよ…さて、わしも旅に出るかのぉ。」

正晴さんは、ぼくにこう言うたあと再び歩きへんろの旅に出た。

先は長いのだ…

ぼくは、正晴さんが言うた言葉を思いながら足摺岬の海をながめた。