暗闇だから、怖くなかった




 春涛は夜だけの店だ。仕事でクタクタになった人たちが安らげる場になれば、とお祖母ちゃんがお祖父ちゃんと立ち上げた。

 だけど元はランチタイムにも店を開けていた。昼は昼で安らぎを求める人たちがいるだろう、というお祖父ちゃんの提案だった。

 葉月はまさにそういう人で、昼の常連だった。この近くにある会社に勤めていて、店でお手伝いをしていた私とはすぐ仲良くなった。


「せめて昼やってれば来てもらえた可能性高かったよね……」

「言ってもしょうがないって……」


 私が呟くと、葉月は首を緩く振った。お祖父ちゃんが亡くなってからは切り盛りするのが大変だと、ランチタイムの営業は無くなっている。

 お祖母ちゃんに「私がいるからお昼も続けよう」と訴えても、彼女は頷いてはくれなかった。ここにこだわることはないのよ、と言うだけで夜のみに切り替えてしまった。


「……私ってそんなに頼りないかな」